家庭学習のミカタ

家庭学習の悩みを佐藤嵩之がビシッと解決!

【失敗確実】99%の保護者が知らずにやっている中学受験が無駄になる危険な行動【遺伝】

 

 



はじめに

皆様お久しぶりです。前回のブログよりだいぶ日がたってしまいました。

 

 

10本記事を書いたので安心したせいか軽いスランプになりました。記事10本でスランプとは我ながら情けない限りです。

 

心機一転頑張ってまいります。

 

 

 

 

 

それでは今回のテーマ

 

保護者の知らない不都合な真実について一本の動画を紹介します。

 

 

 

それがコチラです!

   

www.youtube.com


 

 

この動画は『日本人の9割が知らないの真実』の著者である行動遺伝学者の安藤寿康氏との対談です

 

 

内容をまとめると行動遺伝学では学力は遺伝と環境で殆ど決まる。親の教育や学校の影響はほとんどない。しかしどんなに才能があっても努力や訓練をしなければ学力は獲得されないというものです。

 

 

ざっくり言うとこんな感じ。

 

 

当たり前と言えば当たり前ですね。

 

 

でもそこで疑問がふと湧きました。

 

学校や親の教育の影響が見られないということは、塾も成績を上げるのに役に立たないのか?

 

 

塾で子供に教えることは意味がないのか?

 

 

私はこれまで試行錯誤しながら塾業界で1300人以上の生徒を指導してきて、

自分なりに指導の成果に手応えを感じてきました。

 

 

これは聞き捨てならないと思い早速この本を読みました。

 

 

その結果は…




①すべては遺伝で決まる

 

『日本人の9割が知らないの真実』は行動遺伝学の本です。

 

 

行動遺伝学とはこの本によれば「知能や性格といった、人間の)心が果たして遺伝するのか。遺伝するとしたら、どれくらい影響を与えているのか」を科学的に研究する学問分野であり、その中心となるのは手法が「双生児法」**ということです。

 

 

大事なのは親子を比較して類似性を見るのではなく「子供だけ」をテストや観察によって類似性を見るという点。だから親の影響ではなく「遺伝の影響」と言うのです。

 

 

 

たとえばアルコール依存症の遺伝の影響は50%以上あります。

家庭環境など双子が同じ環境の影響(共有環境と言います)は、約13から15%ぐらい。残りの約30%が個別的な環境の違いです。(非共有環境と言います)

 

 

ただし行動遺伝学の成果は統計的、確率的なもので、せいぜい影響があるとか相関関係があるという意味です。

 

 

遺伝子のどこの部分が働いているとか共有環境や非共有環境の何がいい影響があるのというような具体的なことはあまりわかっていません。

 

 

それにもかかわらず「遺伝の影響は一生変わらない」とか、「才能は遺伝ですべて決まってしまう」という誤解をよく受けます。

 

 

それは「遺伝」という言葉の印象が親の影響と同義で受けとらえられてしまうことにあるではないかと想像します。

 

 

 

ちなみに遺伝の影響の調べ方は「指紋数や体重、IQ(知能)や学力のテスト得点、さまざまの側面の性格をアンケートで調べた得点、それにうつの程度や自閉症、そして反社会的行動の程度について相関係数***を割り出した」とのことです。

 

 

それでは学力についての遺伝と環境の影響を見ていきましょう。

 

 

 

 

 

この記事での引用は特に断りがなければ『日本人の9割が知らない遺伝の真実』(安藤寿康・SB新書)からのものです。

 

**

「双生児法」とは簡単に言うと一卵性双生児と二卵性双生児の類似性を比較するというもの。同じ受精卵から生まれた一卵性双生児は遺伝子は完全に同じなので共有率は100%。二。父母の遺伝子が減数分裂という現象によって半分づつ子供に受け継がれる二卵性双生児はお互いに共有遺伝子は約50%。それら同じ環境で育った一卵性双生児とと二卵性双生児を比較し、50%より類似性が見られたら遺伝の影響があるとする。

 

***

相関係数とは類似性の高さを数値化したものできょうだいの数値が全く同じなら、相関係数は「1」。ばらけるにつれて小数点以下に数値が下がっていく。例えば体重の一卵性双生児の相関係数は0.90。二卵性双生児の相関係数は0.46。(双子の相関係数からの遺伝・共有関係・非共有関係の効果量の求め方については割愛)

 



②親と学校の影響は4%?

 

安藤氏によれば9歳児の国(英)語遺伝の影響約65%

非共有環境約22%約13%が共有環境となります。

 

 

さらに算数はというと遺伝が約73%非共有環境が約23%

共有環境は約4%

 

算数のほうが遺伝的影響が強いことがわかります。

 

 

逆に言えば言語的能力のほうが親や学校の教育の効果が見られるということです。それでも約1割の影響しかありませんが。

 

 

そこで次は知能指数IQについて見てみましょう。

 

 

IQの相関係数は発達とともに変化します

 

 

全体的には遺伝50%以上、共有環境が約34%、非共有環境が約16%です。

 

 

このように知能や学力には遺伝の影響が大きくかかわっています。しかし繰り返しになりますが親の学歴が低いからとか勉強が嫌いだから勉強してもムダだということにはなりません。

 

遺伝の影響は複雑なので両親からの遺伝子の単純な足し算でない遺伝の現れ方(非相加的遺伝といいます)があるからです。

 

これ以上の遺伝の説明は素人の私には手に余りますので、ご興味を持たれた方はぜひ

『日本人の9割が知らない遺伝の真実』をお読みください。

 

 

以下リンクを張っておきます

 

 

 

 

 

 

 

このように学力における遺伝の影響が無視できませんです。

 

特に算数の共有環境の影響は約4%なので塾はもちろん算数が苦手な親が教えても効果がないように思われます。

 

それでは行動遺伝学の知見を踏まえたうえで、子供の成績を上げるために親は何ができるのでしょうか。





発達によるIQの相関係数の変化。
児童期の遺伝の影響は約42%・青年期は約55%・成人初期では65%以上。
児童期の共有環境の影響は約30%・青年期は約27%・成年初期では約16%。
児童期の非共有環境の影響は約27%・青年期は18%・成年初期では約18%





③大事なのは子供のやる気

 

 

私たちは親子の顔や容姿が似ていることは当然のように受け入れています。

でも知能や才能の遺伝についてはそうではありません。

 

 

なぜならば才能や知能は自らの努力によって獲得するものだからです。

 

どんなに才能に恵まれても訓練をしなければその道のプロにはなれません。プロ野球の選手の子どもが初めて野球をしてホームランを打てることはないですし、ピアニストの子どもが聞いたこともない曲をいきなり上手に弾くことはないでしょう。

 

そして遺伝の現れ方は複雑です。例え算数の才能が乏しくても非共有環境の影響は約24%あります。

 

 

非共有環境は個人的な環境の違いですから、他人より努力することで遺伝的には恵まれていないはずの能力が開花して算数ができるようになるかもしれません。

 

 

大切なのは本人が努力してでも能力を手に入れたいと思う気持ちです。学力でいうなら本人が勉強をできるようになりたいと思う気持ち。中学受験ならば志望校に受かりたいと強く思う気持ちです。

 

 

つまり勉強する動機がなければ努力するはずかないということです。

 

 

しかし中学受験でよく見かける光景はこの真逆をいっています。

 

 

大手の進学塾は4・5年で中学受験に必要な知識を学習し終えますので、ついていけない子は4年生のつるかめ算あたりで、四苦八苦です。

 

 

それでも「我が子」のためを思う親は無理やり勉強させようとし、思うようにいかずに悩みます。

 

 

これまで「子供が勉強しない」という相談を私は数多く受けてきました。

 

このような相談に対する私の回答は以下の通りです。

 

 

「無理強いしても、子どもは勉強するようにはなりません。それよりも成績を上げたいとか志望校に合格したいという動機のほうが大事です。自分の意志で子どもが勉強しない限りは成績は上がりません」。

 

 

行動遺伝学では学力についての親や学校の影響である共有環境は約4~13%。この場合の共有環境は教え方とか勉強時間というような形式的なもののことを指しています。

 

「先生に褒められたから」、「親が喜ぶから」勉強が好きになったというような個人的な動機非共有環境にあたり、それは約22,3%になります。

 

 

大切なのは共有・非共有環境をあわせた約30%を子どものやる気を誘発するように親や先生は働きかけることではないでしょうか。




まとめ

 

学力において行動遺伝学が明らかにした点は3つ。

①約6~7割が遺伝の影響があること。

②親や学校の教育の影響は約4~16%の影響しかないこと。

③残りは個人的な環境の影響であること。

 

このことから言えるのは、

 

①遺伝的影響は親よりそのまま伝わるわけではなく、環境により発現の仕方は異なるので子どもに多様な経験を積ませた方が良いこと。

②親や学校の教育の影響は小さいので強制することなく勉強に興味を持つように誘導すること。

 

 

 

最後に遺伝子工学者の村上和雄の言葉を引用して締めくくりたいと思います。

 

 

安っぽくものごとを考えず、早わかりしない。鈍で重だが、深く大きく思考する。そうした人が遠回りをしながらもたしかな成果をあげ、時間はかかるけれど、いちばん遠くまで行くのは、科学の世界にかぎらず,けっして珍しいことではありません。

 

『アホは神の望み』(村上和雄サンマーク出版

 

 

 

 

 

 

 

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